電話番号が書いてあるのに、タップしても発信できない。スマートフォンでサイトを見ている人にとって、これは地味だが致命的なつまずきです。
いまサイトを見ている人の多くはスマートフォンを使っています。総務省の調査でも、個人のインターネット利用機器はスマートフォンが最多で、店舗や事業者の情報を探すときも同様の傾向があります。その利用者が電話番号を見つけたとき、tel:リンク(<a href="tel:0312345678">のように書く、タップした瞬間に発信画面が開くリンク形式)になっていれば、そのまま1タップで発信できます。なっていなければ、番号を目で確認し、電話アプリを開き、10桁前後の数字を手入力するという、パソコン時代のままの手順を踏むことになります。
この記事の数字はすべて、2026年9月時点・603サイトの実測値です。今回はその中でも、電話番号がこのtel:リンクの形式になっているかどうかを、業種別に集計しました。
603サイトの実測:来店型の16%が、電話番号をタップできる形にしていない
603サイトのうち、電話番号は書いてあるのにtel:リンクになっていないサイトは76件。**全体の13%**でした。
この数字だけ見ると、大きな問題には見えないかもしれません。ですが、業態で絞り込むと様子が変わります。
来店・来院がゴールになるサイト(飲食店、美容サロン、歯科医院、整体院、介護施設、自動車販売店など)は302件ありました。この302件に限ると、tel:リンクなしは47件、**16%**まで上がります。

| 対象 | 母数 | tel:リンクなし | 割合 |
|---|---|---|---|
| 全体 | 603件 | 76件 | 13% |
| 来店型サイト | 302件 | 47件 | 16% |
表① tel:リンク未実装の件数(全体・来店型)
来店型サイトのほうが、電話が問い合わせ手段として使われる比率が高い業態です。近くの店を探して、その場で在庫や空き状況を確認したい、道順を尋ねたいという場面が多いからです。にもかかわらず、平均より未実装率が高いという逆転が起きています。
未実装のパターンにも傾向があります。多いのは、電話番号が画像として埋め込まれている、あるいはヘッダーやフッターに単なるテキストとして置かれているケースです。どちらも人間の目には電話番号として読めますが、ブラウザにとってはただの文字列や画像でしかなく、タップしても何も起きません。さらに厄介なのは、サイト内の一部のページだけtel:リンクになっていて、別のページ(アクセスページやフッターなど)では素のテキストのままという、実装が中途半端なケースです。この場合、診断上は「実装あり」と見えても、訪問者がどのページから電話をかけようとしたかによって成否が変わってしまいます。
業種で見ると、43%から0%まで大きく開く
来店型302件を業種別に割ると、差はさらにはっきりします。

| 業種 | tel:リンクなし | 割合 |
|---|---|---|
| 介護・福祉 | 13 / 30 | 43% |
| 自動車販売・整備 | 7 / 30 | 23% |
| 観光・宿泊 | 5 / 30 | 17% |
| 医療・クリニック | 5 / 30 | 17% |
| 歯科 | 5 / 29 | 17% |
| 結婚式場・ブライダル | 4 / 30 | 13% |
| 整体・治療院 | 3 / 30 | 10% |
| 美容・サロン | 3 / 33 | 9% |
| 教育・スクール | 2 / 30 | 7% |
| 飲食 | 0 / 30 | 0% |
表② 来店型サイトの業種別・tel:リンク未実装率(高い順)
上位に並ぶのは、介護・福祉(43%)、自動車販売・整備(23%)、観光・宿泊と医療・クリニックと歯科がいずれも17%前後です。最も低いのは飲食で、30件すべてが実装済み、未実装は0件でした。
電話が主要な成約経路の業種ほど、この一手間が売上に直結する
なぜtel:リンクの有無が軽視できないのか。業態ごとの問い合わせ経路を考えると理由がはっきりします。
介護・福祉は、家族が施設や在宅サービスを探すとき、最終的な相談はほぼ電話で行われます。空き状況や個別の事情はサイト上のフォームでは完結せず、担当者との会話が前提になるからです。今回の実測で介護・福祉が43%と最も高い未実装率だったのは、この業種にとって特に痛手です。相談したい家族がスマートフォンで電話番号を見つけ、指でタップしても何も起きない。もう一度番号を目で確認して、電話アプリを開いて、10桁前後の数字を手入力する。この数タップの差で、離脱してしまう人が一定数います。
自動車販売・整備も同様です。車検の予約、故障時の緊急の問い合わせ、見積もりの相談は、フォームの入力を待てないケースが多い。23%という未実装率は、緊急性の高い問い合わせを取りこぼしている可能性を示しています。
医療・クリニックと歯科も17%前後で未実装がありました。予約の空き確認や当日のキャンセル連絡は電話が最速の手段であり続けています。オンライン予約システムを併用しているサイトでも、電話問い合わせの動線を軽視してよい理由にはなりません。
観光・宿泊も17%です。直前の空室確認、団体利用の相談など、フォームでは対応しきれない問い合わせが電話に流れる業態です。
これらの業種に共通するのは、フォームでは完結しない相談が問い合わせの中心にあるということです。フォームの改善に力を入れていても、電話という経路そのものが機能していなければ、そこにたどり着いた見込み客を取りこぼします。
しかも、電話をかけようとする人は、比較検討がすでに終わっている見込み客であることが多いという点も見逃せません。フォームに何行も入力する手間をかけずに、いきなり電話をかけてくる人は、他社との比較を終えて「あとは条件を確認するだけ」という段階にいるケースが少なくありません。問い合わせの母数としては小さくても、成約に近い層です。ここで数タップの余計な手間を発生させることは、母数の大きいフォーム経由の問い合わせを1件取りこぼすのとは違う重さを持っています。
飲食だけが0%だった理由
一方、飲食は30件すべてが実装済みで、未実装は1件もありませんでした。今回の来店型10業種の中で、唯一の例外です。
理由として考えられるのは、飲食店の予約行動の性質です。「今日の夜、19時に4人で入れるか」「今から行っても席はあるか」といった問い合わせは、即時性が極めて高い。フォームで送信して返信を待つという流れ自体が成立しません。結果として、飲食店の予約はもともと電話が主要な経路として定着しており、電話番号の扱いにも自然と注意が払われてきたと考えられます。また、飲食店向けのホームページ制作サービスやグルメサイトのテンプレートは、店舗ページに電話番号ボタンを標準搭載していることが多く、これも実装率を底上げしている一因でしょう。
裏を返せば、他の業種でも「電話予約が主要な経路である」という自覚さえあれば、tel:リンクの実装は技術的に難しい作業ではありません。飲食が示しているのは、能力の差ではなく、電話という経路への意識の差だということです。
介護・福祉や自動車販売・整備が、飲食と同じように電話中心の業態でありながら未実装率が高いのは、業種としての制作テンプレートの成熟度がまだ追いついていないためだと考えられます。飲食店向けのサイト制作サービスやポータルサイトが、電話ボタンを標準機能として長年提供してきたのに対し、介護施設や自動車販売店向けのテンプレートは、まだそこまで型が固まっていない領域なのでしょう。
自社サイトではどう判断するか
まず、自社のサイトを実際にスマートフォンで開いて、電話番号の文字列を指でタップしてみてください。発信確認の画面が出れば実装済みです。何も起きない、あるいは電話アプリではなく別の画面が開く場合は、電話番号がただのテキストとして置かれているだけの状態です。
次に、判断の軸を「自社の問い合わせが、どれだけ電話に依存しているか」に置いてください。フォームやチャットである程度完結する業態であれば、優先度は相対的に下がります。逆に、今回の実測で未実装率が高かった介護・福祉、自動車販売・整備、医療・クリニック、歯科、観光・宿泊のように、相談や予約の最終段階が電話でしか完結しない業態であれば、これは後回しにできない改修です。
実装自体は、電話番号を<a href="tel:0312345678">という形式のリンクにするだけです。デザインを変える必要はなく、既存の電話番号表示をこの形式に置き換えれば済みます。確認すべき箇所は、次の4つに集約できます。
- ヘッダー:全ページ共通で表示される電話番号。ここが未実装だと、全ページで機会損失が起きる
- フッター:ヘッダーには実装済みでも、フッターだけテキストのままというケースが目立つ
- 店舗一覧・拠点ページ:複数店舗を持つ業種で見落とされやすい。店舗ごとに番号が異なるため、1件ずつ確認が必要
- アクセス・お問い合わせページ:来店を検討している人が最後に開くページ。ここでの取りこぼしは特に痛い
1箇所だけ直しても、他のページで同じ番号がテキストのままなら、そこからの離脱は防げません。サイト内を横断して、電話番号が表示されているすべての箇所を洗い出すのが確実です。
もう1つ、実装したあとの話も触れておきます。tel:リンクにしただけでは、そのリンクが実際にどれだけ発信につながったかは分かりません。アクセス解析のイベント計測や、コールトラッキング(発信元ページごとに異なる番号を表示し、どのページ経由の電話かを追跡する仕組み)を入れれば、電話経由の反響を数字で把握できるようになります。ただし、それはtel:リンクを実装したあとの話です。まずタップできる状態にすることが先です。
自社サイトのどのページで電話番号がリンクになっていないか、また電話導線以外にどこで問い合わせを取りこぼしているかは、ページを1枚ずつ目視で確認するより、診断ツールで一括して洗い出したほうが早く済みます。私たちが公開しているコンバージョン偏差値スキャナーでは、URLを入力するだけで、この記事で使った603サイトと同じ基準で電話導線を含むUI/UXの実装状況を採点し、同業種の中での偏差値として結果が出ます。登録は不要で、2〜3分で画面に表示されます。
サイト全体の傾向を見たい場合は、20業種の総合スコアを一覧できる軸記事もあわせてご覧ください。
まとめ
- 603サイトの実測で、
tel:リンク未実装は全体の13%(76件)、来店型サイトに限ると16%(47件)だった - 業種別では介護・福祉が43%で最も高く、次いで自動車販売・整備23%、観光・宿泊・医療・クリニック・歯科がいずれも17%前後
- 唯一の例外は飲食で、30件すべてが実装済み。電話予約の即時性への意識の高さがうかがえる
- 電話が主要な成約経路になりやすい業種ほど、この一手間の有無が売上に直結する
- 修正はリンク形式を変えるだけの軽微な作業。デザインを変える必要はない
自社サイトの電話番号が、タップ1回で発信できる形になっているか。URLを入れるだけの無料診断で、電話導線を含めた同業種の中での位置が偏差値で分かります。

